凌雲グループ(社会医療法人凌雲会、社会福祉法人凌雲福祉会)

回復期リハビリテーション病棟

回復期リハビリテーション病棟

脳卒中のリハビリ

片麻痺

脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの総称で、複雑な症状が出ます。 多くは片麻痺(かたまひ)という体の左右どちらかの半分の力が抜けたり、感覚が分からなくなったりする病気です。 脳も左右に分かれており、どちらの脳に障害が出るかによって、どちらの半分に症状が出るかが決まります。 また障害された脳の部位によって、出る症状もまちまちです。体に力が入りづらい、うまく動かせないといった症状を運動麻痺、 感覚が分からなくなったり、しびれたりという症状を感覚麻痺といい、どちらも脳卒中の代表的な症状です。 痙縮という筋肉の緊張が抜けなくなる症状が出て動きを阻害することもあります。

脳梗塞MRIの画像

また小脳などに病変があると麻痺の症状は軽くても平衡感覚が障害され、バランス障害をきたし、まっすぐ立っていられなくなったり、 歩けなくなったりすることもあります。こういった症状には接地面との感覚や、重心の取り方等の訓練を繰り返し行っていきバランス感覚を養っていきます。

手足を動かす訓練、感覚を引き起こす訓練などと同時に、寝返り、起き上がり、トイレ動作や食事動作、入浴動作の訓練を進めていきます。 また足に力が入らず、歩けない場合は装具等を作り、それを支えに歩行訓練を進めていきます。 実際に屋外に出て悪路を歩いたり、スーパーなどに買い物に行ったり、公共交通機関を利用したりという訓練も行います。

高次脳機能障害

高次脳機能障害という症状は脳卒中を発症された約3分の1程度の方にみられる症状です。 高次脳機能障害の中には様々な症状があり、代表的なものに、注意障害、半側空間無視、失行等があります。 注意障害になると集中力が続かなくなったり、周りに注意を向けられなかったり。

また脳損傷の部位によっては、記憶が障害されたり、道順が分からなくなったり、性格が変わってしまい、怒りっぽくなってしまうこともあります。 これらすべては高次脳機能障害という、脳卒中が原因によっておこる後遺症のひとつです。 これらの症状は在宅生活や社会生活を送るのにとても弊害となります。 これらの症状に対しても訓練を行い、在宅生活や社会生活に向けた取り組みをしていきます。

半側空間無視

半側空間無視といって視界の半分に注意が向けられなかったりします。半側空間無視は右左どちらかを無視してしまいます。 左の半側空間無視が多く見られます。視界の左半分に気付かないという症状です。見えないのとは違います。 見えないものは視野障害といって区別します。気付かないだけですので注意を向けるよう促すと見えます。 でも日常生活においては左にある障害物をよけることができなかったり、食卓の左側のおかずに気付かずに残したりします。 左側から来るものにも気付かないことがあるので、屋外に出ると非常に危険なことがあります。

注意障害

集中力が途切れてしまい、物事を持続・継続することができなくなります。 また周囲の状況に注意を向けられず、危険な行為を危険と認識できなくなったりします。 今の自分の体の状態でできること、できないことの判断が難しくなる傾向もあります。 リハビリに集中してできなくなったり、危ないので一人で歩いてはだめですよ、といっても一人で歩こうとしたりします。 脳卒中に非常に多い高次脳機能障害の一つです。

言語聴覚訓練

脳卒中で左側の脳に障害を受けると言葉が上手く出てこない、 こちらの言っていることが理解できない「失語(しつご)」という症状が現れるときがあります。 左側の脳に損傷があるときに起こることがあります。リンゴを見ても「り・ん・ご」という言葉が上手く出てこない症状で、 これを運動性失語といいます。絵カードや音読によって言葉を思い出す訓練を行います。 またこちらの話す言葉が上手く理解できない感覚性失語という症状もありますし、その両方の症状が出るケースもあります。

また言葉自体、脳は覚えていますが、麻痺で口や舌が上手く動かせないためにうまく言葉が出せない「構音障害(こうおんしょうがい)」という症状もあります。 これは口や舌の筋肉の運動(口の体操など)をすることによって滑らかな言葉が出るように訓練していきます。

摂食嚥下障害

嚥下造影検査の様子

脳卒中では運動麻痺が主な症状の一つですが、飲み込みも喉(のど)の麻痺によって障害されることがあります。 また飲み込の時に起こる嚥下反射がうまく起こらなかったりして、気管に食物が入ってしまう「誤嚥(ごえん)」を起こしてしまい、 それがもとで肺炎にかかる確率が上昇します。

当院では飲み込の障害がある患者さん、また疑わしい患者さんに嚥下造影検査(バリウムの入った液体や固形物を飲み込んでもらい、 それをX線で撮影し気管に入ったり、飲みこんだものがのどに引っかかったりしていないかを映像で捉える検査)を行い、 画像によってきちんと嚥下ができているかどうかの検査をし、嚥下能力に応じた、いくつもの食事形態を用意しています。

「食べる」ということは歯でものを噛んで、舌で塊にまとめてから喉に流し込みます。 食べたものがのどを通過するとき、反射的に気管への道をふさぎ、食道への道をあける仕組みになっています。 これら一連の仕組みのどれかが上手くいかなくても正しい嚥下はできません。 どの部分に障害があってどんな訓練が必要なのか、今の時点での安全な食事はどのようなものか、をしっかりと検討しなければなりません。

更に人生において食べるということは非常に楽しみな部分でもあり、重要な部分です。 訓練を行い、また食べられるようになることでQOL(生活の質)を豊かなものにできるようにしていきます。

口腔ケア

舌苔

口の周りや舌にも麻痺があると口の動きが少なくなり、唾液の分泌量が下がり、口の中がネバネバしてきます。 唾液は殺菌効果があるため、口腔内の衛生に非常に深く関わっています。 口腔内衛生が悪くなると、舌に舌苔(ぜったい)という白い苔のようなものができるときがあります。 これは細菌の集まりです。口腔内の衛生が保たれていないと、肺炎の原因になることは証明されています。 脳卒中の方の口腔ケアは肺炎予防の観点からも、もはや必須のケアとなっています。 当院では歯科衛生士が介入し、口腔衛生を適切に保つお手伝いをします。

また連携している歯科医師が出張診療してくれることもあり、入院中の義歯(入れ歯)の調整や歯の治療等も行ってくれます。 特に義歯の調整は力を発揮したり栄養摂取したりと非常に重要です。口腔すべての面においてケアしていきます。

NST(栄養支援チーム)

NSTラウンドの様子

NST(栄養支援チームNutrition Support Teamの略)で栄養状態、体重、血液検査の結果、食形態、摂取カロリー、 リハビリでの運動量など様々な角度から検討してその人にベストな栄養量と運動量を検討する会議です。 栄養はリハビリテーションにとってもはや欠かせない分野となっています。栄養状態によってはリハビリ内容も変更します。 筋肉づくりに必要な十分なたんぱく質がないと、いくら訓練をしても筋肉はできずにエネルギーを消費するだけになってしまい、 逆効果になってしまう事もあります。 医師、看護師、管理栄養士、歯科衛生士、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士などの各専門職がチームとして栄養面からも皆さんを支援します。

食事風景の観察や食形態の確認を行った後カンファレンスを行い、患者様の栄養と運動について話し合います。

在宅訪問

必要な方には入院早期より、リハビリスタッフと社会福祉士が在宅訪問を行っています。 お宅を拝見することによって、どのような家屋環境へ帰るために、どんな訓練をしておかなければならないのかを見てきて、 目標の設定や訓練計画に役立てます。また退院の際に、手すりや段差解消、トイレやお風呂の改修が必要になるかなどの情報を、 入院の時点で把握しておくことによって、よりスムーズで無駄のない支援につなげるためです。

また必要な方には、退院前にもリハビリスタッフが患者さんと一緒に再度お宅を訪問します。 これまでやってきたリハビリが、実際家に帰った時にできるか、またどのような準備が必要かを把握するためです。 ここで必要であれば改修業者が同行し、リフォームのプランを話し合うこともあります。

とにかく廃用症候群予防!

廃用症候群(安静にして体が衰えていくこと)はリハビリの敵です。廃用症候群は様々なところで起こっています。 安静にしていると筋肉を使わないのでもちろん筋肉は痩せて衰えてきます。 起きないと起きれなくなりますし、歩かないと歩けなくなってしまいます。 食事を飲み込まない期間が長くなると、喉の筋肉が衰えて飲み込めなくなってきます。 声を出さないでいると声帯の震えが減少して声が出なくなってきます。 浅い呼吸をつづけていると胸郭(肋骨)の動きが狭くなり空気の取り込みが悪くなります。 体を動かしていないと関節は固く動かしにくくなってきます。骨は体重をかけたり刺激を与えたりすることで、強く、太くなっていくので、 ずっと寝ていたり体重をかけずに暮らしていると骨は痩せてもろく(骨粗しょう症の状態)なります。これらすべてが廃用症候群です。

手術後も、脳卒中を発症しても、その直後から体は弱り始めます。一度弱ってしまうと高齢になるほど筋力の回復には時間がかかります。 すなわち、弱らせないようにするのが最も効果的なリハビリです。 一刻の猶予もなく、体を動かし、起き、立つことそして声を出し、飲み込み、呼吸をすることすべてが重要になってきます。 人の体は起きて座るだけでも様々な筋肉が働き始めます。特に腹筋や腰回りの筋肉は体を支えるのに重要な筋肉が集まっています。 安静臥床は百害あって一利なしです。再び生活に戻るためにできる限りの動作を自分で行えるように支援させて頂きます。

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